レポート準備

森田:気象予報士の森田正光です。
5回目のバナナ予報始まりました。
Podcast聞いていらっしゃる方から「結構面白い」や「マニアックすぎる」などのコメントを貰えて、ほんとうに嬉しいです。
我々は感想が励みなんです。
だから感想がないと誰も聞いてないのかと思ってしまい心が重くなってきますので、ぜひ皆さんよろしくお願いします。
島バナナは知らない人が大半というかほとんどなんです。
毎回言ってますがスーパーで売られてるバナナは色々な値札や産地が書かれていますが、そのほとんどがキャベンディッシュという同じ種類のバナナなんです。
今回のテーマは小笠原種と言って、小笠原の方からやってきたバナナです。
私は島バナナ協会というのを今年立ち上げました。
栽培技術学術プロジェクトというところですね。
今沖縄のあるところで畑に数十本島バナナを植えてるんですね。
知らないことがいっぱいで、あらゆることが深くなればなるほどわからなくなるんです。
前回は愛知県の稲沢バナナ園の石田守さんという方からお話を聞きましたが今回は
島バナナについて様々なことをお聞きいたします。
小谷真吾先生です。
よろしくお願いします。
小谷先生は長崎大学の佐藤靖明先生が「島バナナのことなら小谷さんだよ」とおっしゃられたので半ば強引に来てもらいました。
私は聞きたいことがいっぱいあるので、すごい楽しみにしてました。
では、よろしくお願いします。

小谷:よろしくお願いします

森田:何も聞いても大丈夫ですよね?

小谷:全て答えられるかどうかわからないですが、質問されたことにはなるべく答えれるようにします。

森田:小笠原種と呼ばれていますが、そもそもなぜ小笠原種という名前なんですか?
それと小笠原から来たということなんですが、小笠原の前はどこに生息していたんですか?

小谷:小笠原諸島は1830年代にハワイの人たちが移り住んで人間の定住が始まったと考えられています。

森田:200年ぐらい前にハワイの方から小笠原に来たということですが、ハワイの前はどこなんですか。

小谷:オーストロネシアンと呼ばれる航海民族がマレー半島やニューギニアあたりで厳選されたバナナをオセアニアなどの東のほうに持って行ったと考えられています。

森田:恐らく、オーストロネシアンは反時計回りで発生する海流に乗ってやってきた感じですね。
200年前だったらもう普通の船ありますもんね。

小谷:そうですね。
その辺がまだまだわからないことが多いんです。
ただ自分のオーストラリア研究を通して予想できることとしては、約6000年前に移住し始めたオーストロネシアの人たちがハワイにバナナを持ち込んだということです。

森田:なるほど。
島バナナの味についてなんですが、かなり独特だと思うんです。
例えば、見た目は島バナナに似たラトゥンダンという種類とも味は異なりますよね。

小谷:それらのバナナのDNAを使って何が一緒で何が違うのかを研究し始めたところなんです。

森田:ではまだわからないんですか?

小谷:はい。
でも、バナナの形についての議論はかなり進んでいるんです。

森田:バナナの形に関しての質問があるんです。
バナナは長さが8cmあるものもあれば、12cmあるものもあるというように大きさにかなりバラつきがあるのはどうしてなんですか?

小谷:それは、土壌や太陽の当たり方などの育て方、品種や病気によるものですね。

森田:育て方でそんなにも違ってくるんですか?

小谷:はい。
それはバナナ以外の植物にも当てはまることですね。

森田:バナナは3倍体の植物と言われていますが、ABの3倍体だったら全部同じ味になるという事なんですか?

小谷:いや、それは違いますね。
バナナはABに様々な味があると思います。

森田:そうですよね。
先生は先ほど、育て方によってもバナナの味は異なると仰っていましたが、野ざらしで育てたバナナと株から育てたバナナの味を比較した時、野ざらしで育てたバナナのほうが酸味が強く美味しく感じるんですが、それはどうしてなんですかね?

小谷:どうですかね。(笑)
どっちの方が美味しかというのは人によって異なりますし、科学的に証明するのは難しいですね。
ただ追熟度合いはかなりバナナの味に影響していると思います。
例えば追熟していないと渋い味のバナナになり、追熟しきると酸味や甘味のある美味しいバナナになるんです。

森田:本当に美味しいバナナを根拠を持って示したいんですが、それがなかなかできないんです。
なので人に島バナナのおいしさを伝えても、広まり辛いんです。
正直、先生は島バナナを商品化できると思いますか?

小谷:そうですね。
ローカルマーケットでは商品化されていくと思います。
ですが一方で、島バナナがグローバルマーケットに出るのはもったいないとも思うんです。
一人の消費者としては沖縄や小笠原に行って食べるといった形で商品化されて欲しいですね。

森田:僕もここ最近先生のような考えをするように成ってきたんです。
最初はより多くの人に島バナナを食べてもらいたいと思っていたのですが、それがいかに難しかを実感したので、今は島バナナを好んで食べる人が増えればいいなと思っているんです。
ところで、島バナナ以外のバナナのことについても教えていただきたいんですが、キングバナナとは一体どんなバナナなんですか?

小谷:キングバナナこそが島バナナで僕は思っています。
キングと呼ばれる理由は1830年に小笠原にやってきた人たちが持ってきたバナナをキングと呼び始めたからということが1860年代の文献に記されているんです。

森田:1830年頃にハワイへ移住した人たちが小笠原にキングバナナを持ち込んだということですね。
そのハワイへ移住した人たちは日本人なんですか?

小谷:1830年代、小笠原は日本の領土ではなくて無人島だったので、ハワイから小笠原に行った人達っていうのはアメリカ人やイギリス人などで、彼らはギルバート諸島から船員として船に乗り込んで小笠原に向かったんです。

森田:それは学校で教えてくれませんでしたね。
日本の武士が分散していく中で、一部の武士が小笠原に定住し始めたことから小笠原が日本の領土になったというのは違うんですか?

小谷:はい。
その言い伝えはそのように作られてるんですけれども、国際法上の領土として文献に残るのは先のような経緯の話です。
明治維新の時に日本人が小笠原を日本領にするためにいろんな運動が起こして、日本領土になるんです。

森田:これ多くの人に聞いてもらいたい話ですね。

小谷:そうですね。
森田さんも小笠原には一度行ってみるといいと思うんです。

森田:行ったことはあるんですが、そのときはさっきのような歴史的な話を知らずに行ったんですよね。
ではもう一度、話をまとめますね。
約200年前に航海師たちが北方に航海し、小笠原種とされるハワイ諸島やマレー半島原産の独特なバナナを小笠原に持ち込んだことを契機に沖縄本島の方や南西諸島の方に広まったバナナが今の島バナナということである。
そしてハワイ諸島やマレー半島原産の小笠原種はキングバナナであるということですね?

小谷:僕はそう考えています。
沖縄では島バナナと呼ばれる品種のバナナは小笠原ではキングバナナと呼ばれているんです。

森田:では本来、島バナナはキングバナナと呼ばれるべきですね。

小谷:ですが、キングバナナが東南米のバナナと同じ染色体なのかはさらに研究される必要があるんです。
約200年前、小笠原では捕鯨船が太平洋を行き来していて、例えば、ペリーは捕鯨船の気候地を探すために小笠原を支配しようとしていたんです。
捕鯨船は日本だけではなくフィリピンやマレー半島にも出入りしているため、ハワイや小笠原のバナナはオセアニアからやってきたのか、あるいは捕鯨船が東南アジアから持ち込んだのかが、まだ分からないんです。

森田:一般的には、バナナに関する本には、バナナはフィリピンから小笠原に持ち込まれ、そこからハワイや沖縄の方に広がって行ったとされているんです。

小谷:そういったは話はオセアニアでのバナナの広がりを考慮していないと思うんです。

森田:なるほど。
バナナはフィリピンから運ばれる前の段階でオセアニアで広まっているということですね?

小谷:はい、そうです。

森田:では次の質問です。
先生は島バナナとキングバナナは品種においては同じものと言われていましたが、味に関してはどうなんですか?

小谷:僕は味も一緒だと思います。

森田:名前が違うだけで、あとは全く同じバナナなんですね。

小谷:そうですね。

森田:この話はバナナ学的には最先端のことですね。

小谷:そうだと思います。

森田:一体なぜ島バナナが世に知られていないんでしょうか?

小谷:日本で主に食べられるバナナが一種類しかないからだと思います。

森田:キャベンディシュですね。
このことは問題だと思うのですが。

小谷:何かの品種をこだわって食べる人にとっては問題ではないと思いますね。
一方で、美味しい品種を探して、食べるという人には問題ですね。

森田:与えられた一つの品種だけを食べるのは家畜と同じようなものだから、皆美味しい品種を探して、食べようということですね。

小谷:大量生産、大量消費の観点で見れば、家畜とも言えるかもしれませんね。

森田:大量生産すれば安くて、美味しいバナナが食べられるというのは良い点かもしれませんが、それだとバナナの文化は死んでしまうから私たちは様々な品種のバナナを食べるべきなんです。
そうすればSDGsにもつながると思うんです。

小谷:その通りですね。

森田:話が変わるんですが、先生はパラオに行かれたことがあるんですよね?

小谷:はい。
バナナの研究をしに行ったというよりかは、日本の領土になりそうだったパラオがどういった国なのかを知るために行きましたね。

森田:太平洋戦争以前、パラオは日本の領土でしたね。

小谷:そうです。
パラオには島バナナやキングバナナと同じ品種のバナナがありました。
また、日本から持ち込まれた砂糖バナナがフィリピンではラカタンと呼ばれ、栽培されているんです。

森田:日本原産のバナナはあまりないから、日本からフィリピンに持ち込まれた砂糖バナナは島バナナということですか?

小谷:DNAで調べてみると砂糖バナナは本当はフィリピン産だったんです。

森田:ではフィリピンから日本に持ち込まれたラカタンが再びフィリピンに運ばれたということですか?

小谷:そうです。

森田:フィリピンから持ち込まれた場所はおそらく沖縄だと思うんですが、ということは沖縄の島バナナはラカタンという可能性が高いですよね?

小谷:そうなんです。
なので島バナナをどう定義するかという問題があるんです。
ただラカタンは先ほど話したラトゥンダンとは別の品種ですので、注意が必要です。

森田:バナナの品種覚えるのは大変ですね。
品種と倍体がごちゃまぜになってしまうんですよ。

小谷:倍体AABとかAAというのは植物学者が名付ける名前の一つだから、消費者や利用者、栽培者はその名前だけ知っていればいいと思います。
例えば、このバナナはあの病気に強いや台風にめっぽう弱いなどのほうが大切ですね。

森田:ところで小谷先生は大学でバナナを育てているというのは本当ですか?

小谷:はい。
玄関で育てているので3分いたただければ持ってきます。

森田:ぜひ、見たいです。

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森田:先生が育てているバナナを持ってきていただきました。
これはキングバナナですか?

小谷:そうです。
4年前に小笠原の方からもらった株を育てています。

森田:高さはどのくらいですか?

小谷:このバナナは二代目で約1.5mですね。
一代目のバナナは4mくらいで、研究室に入らないくらい大きくなってしまったので切ってしましました。

森田:育てたバナナに実は成りましたか?

小谷:島バナナは花も咲かなかったですね。

森田:4mもあると温室で栽培するにも大変ですね。

小谷:はい。
なので実を咲かせることを目的とせずに観葉植物として育てるのは良いですが、栽培を主として島バナナを本土で育てるのは無理かなと思っています。

森田:実は僕もマンションのベランダでアケビバナナと三尺バナナを育てているんです。

小谷:3尺バナナは育てやすいですよね。
僕も3尺バナナを育てていたんですが、今年は花が咲きました。
ただ実は結局実ることなく枯れてしまいましたね。

森田:意外と難しいんですね。
すでにアケビバナナには花が咲いたんですが、3尺バナナはまだ咲いてないんですよ。

小谷:3尺バナナは次回の二代目は実がなると思います。

森田:二代目というのは吸芽から育つもののことですか?

小谷:そうです。

森田:バナナは何回、吸芽から育つことができるんですか?

小谷:無限に育つと思います。
バナナは種がないから、基本吸芽から育ちます。

森田:では何回でも栽培できますね。
小谷さんが育てているバナナをもらえることはできますか?

小谷:いいですよ。

森田:本当ですか?

小谷:はい。(笑)

森田:では今度、千葉大学までバナナを貰いに行きますね。

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森田:今回のバナナ予報のお話は千葉大学の小谷真吾先生でした。
ありがとうございました。

小谷:ありがとうございました。