味と香りを追求する試験農園
目指している「美味しい島バナナ」とは
人は感動するほど美味しいものに出会うと、また食べたいと思うのはもちろんのこと、誰かと共有したい、食べてもらいたいと思うものではないでしょうか。
私たちにとっては、それが島バナナであり、誰かに食べてもらった時に同じように感動してもらいたいからこそ、島バナナの「美味しさ」をとても大切に考えて栽培に取り組んでいます。
バナナの美味しさは、人によって感じ方が違いますが、私たちが目指している島バナナの美味しさは、さわやかな酸味と香りがしっかり感じられて上品な甘味があり、食感はねっとりせず舌触りなめらかであることです。
そういった「美味しい島バナナ」に出会うことが近年少なくなっているため、自分たちの手で再現しようという試みが「森田さんの島バナナ農園」です。
「美味しい島バナナ」がどんどん少なくなっている?!
私たちは、栽培に取り組む前から、島バナナを日本中の多くの人に食べてもらいたいという思いで島バナナを広める活動をしていますが、実は「美味しい島バナナ」を自信をもって人に勧めることができないでいます。
私たちが、島バナナを広めようと手探りで発信し始めた2019年夏から今日2024年夏に至るまで、島バナナを入手することは容易でも「美味しい島バナナ」に出会うことが非常に稀なのです。
見た目は島バナナであり、島バナナというラベルが貼られて売られているものは沖縄にはたくさんありますが、購入して食べてみると、酸味・香りがあまりなく、誰かに食べてもらって感動を共有することはできないと感じます。
50年前は、沖縄を歩いていて、ふとその地のおばあさんが差し出しただけの島バナナに感動できたという事実を思うと、その頃は「美味しい島バナナ」にあふれていたのではないでしょうか。
事実、代表の森田は50年前に島バナナに感動してから、数年おきに沖縄へ行くたび、島バナナを購入し、10年ほど前までは「美味しい島バナナ」を食べることが簡単にできていました。
5年前となると、島バナナが販売されている光景を見ることは増え、反比例するように「美味しい島バナナ」に出会うことが少なくなっていました。
これは、日本におけるバナナブームと関係しているのではないかと考えています。
なぜ「美味しい島バナナ」と出会えないのか
明治時代に、日本でバナナの輸入が始まって以来、バナナブームが3回ありました。
(ここで言う「バナナ」はキャベンディッシュという種類のバナナです)
3回目のバナナブームで、栽培者により効率よく収益をあげられるよう生産することが行われた結果、島バナナにおいても、昔ながらの独特な酸味と香りを失っていったのではないかと考えられます。
第1次バナナブームは、1963年の輸入自由化です。
輸入量が増加し、それまで高級フルーツだったバナナは値段も手頃になり、年中店頭に並ぶ身近な果物になりました。
2004年には、日本の果物消費量において、みかんを抜いてバナナがトップとなり現在に至っています。
第2次バナナブームは、2008年の「朝バナナダイエット」のブームです。
有名タレントが朝食にバナナと常温の水を飲むだけの手軽なダイエットをしていることがメディアで紹介されたことをきっかけに、爆発的にバナナが売れるようになり、小売店の店頭で品薄になるほどでした。
それ以来、バナナはヘルシー志向と相まって常に人気のあるフルーツとなりました。
そして、島バナナの味にも影響を与えていると思われる第3次バナナブームが起こります。
2019年から続いていると言われています。
国産バナナを中心に、1本数百円以上の高級バナナや、高いものでは1000円ほどの超高級バナナも登場しました。
街にバナナジュース専門店や、バナナスイーツ店などが登場したのもこの頃です。
豊富な栄養素が含まれている一方、低カロリーでヘルシーなバナナが、現代に増えている健康志向の消費者に受け入れられたのではないでしょうか。
この第3次バナナブームの中、島バナナは通販でも販売されるようになり、販売向けに、栽培者によって効率よく収益をあげられるよう生産することが行われたのではないかと考えられます。
それは、島バナナがより多くの人に渡るという点ではとてもいいことであり、農業の持続発展のためにも必要なことです。
しかし、より早く・より大きく・より多く収穫するために、肥料その他の手入れが行われたことで酸味や香りは失われたと考えられます。
実際、「美味しい島バナナ」は、果実が10cmほどで大変小さいのですが、沖縄の店頭には、12cm以上の島バナナがたくさん並べられています。
また、「島」がつくものは沖縄の人にとって誇りに思う沖縄の特産である証。
観光客にも喜ばれます。
そのためか、似た形状・サイズの別のバナナ(モンキーバナナやアップルバナナであろうと思われるバナナ)を「島バナナ」というラベルで販売している光景も見受けられます。
それが、私たちが考える「『美味しい島バナナ』となかなか出会えない理由」です。